アロマトピア誌76号
ボディサイコセラピーにみる精神面と身体一特質とそのつながり
第1回 人格形成論(Character Structure)一初期
井上裕美子

アロマトピア誌76号
第1回 人格形成論(Character Structure)一初期
井上裕美子

セラピストとしてボディワークの経験を積み重ねていくと、身体と精神との関わり合いに興味を持たれる方も少なくはないかと思います。私もその一人であり、同じような体型をしたクライアントが、仕事ではとても成功しているといった似通った環境に置かれていたことに気付き、どうしてなのだろうかと疑問を抱いたことがあります。しかしそういった疑問も、ボディサイコセラピーを勉強するうちに明らかな答えが見えてきたといえます。そこで、今回から数回にわたり、ボディサイコセラピーの理論のひとつである「人の性質(character)分析」について紹介します。
この理論は、オーストリア生まれの精神分析者、ヴィルヘルム·ライヒ(WilhelmReich1897-1957)によって生み出されました。彼は、自らの経験から、幼年時代に似通った経験や親子関係をもつクライアントは体型も似通っていること、また基本的に精神状態が同じであることを発見し、人の性質というものが幼少期に経験した精神的外傷に関係があると述べています。このように精神的ショックを受けた幼児は、次第に感情を打ち秘めるようになり、精神的防衛が習慣になるからなのです。また、欲望が満たされない幼児の不満が筋肉の緊張、エネルギーの流れに妨害を及ぼし、体型を形成すると言われます。
この理論により、ボディサイコセラピストは、体形、筋肉と脂肪の付き具合、呼吸の仕方、皮膚の色ときめ、姿勢、体の動かし方、そして代謝のパターンなどから、その人の性質を見分けることが出来るようになります。熟練したセラピストは、クライアントが部屋に一歩足を踏み入れた瞬間に、人格を見極められます。ライヒは、幼少期の環境と、胎児から6歳までの間のいつ頃最も精神的外傷を得たのかをもとに、人格形成を主に5つに類別し説明しています(図1)。その中の2つの性質が最も強く人の体に現れると言われています。

一生存の権利の要求
スキゾイド型は、母親の胎内に居る頃から生後6カ月の間に受けた精神的外傷が影響しています。この時期の主な世話人である母親の過酷で冷淡な態度、敬遠的で無関心な態度に強く結びつきがあります。母親が、妊娠中に子供を中絶するのかどうかと迷ったり、困難な出産を経験しストレスを感じたり、怒りっぽく、子供に愛情が見られず、子供など欲しくなかったという態度を見せたりと、母と子の精神的つながりが失われるため、子供は母親から見捨てられたと感じるようになります。幼児は、親から憎まれ、拒絶され、または見捨てられ、親からの温かい思いやりの不足や親子関係の否定を感じ取ります。そして、生存する権利の否定、周囲からの歓迎や身体的に抱かれることなどなく、この世に生まれて良かったと感じることが出来なくなります。そのため、自己を頼み、深い絶望や恐怖感をもみ消すことを覚え始めます。そして、彼らは頭に浮かぶイメージや幻想の世界に生きるようになり、現実に触れることがほとんどなくなります。
スキゾイド型の人は、脅威にさらされたと感じたときには、視線をそらしたり、意識を解離したりするなど、現実から内に引きこもることが習慣となります。徴候として、慢性の心配症であり、逃避的行動を取り、社交的交際、信頼、そして誓約に対する心の葛藤が見られます。たいていは、自滅的または自傷的行動を取り、自己嫌悪に陥ったりと自己に不満であり、自分の面倒をみたり、慰めたりすることに乏しいことがあげられます。これは、生存する権利がないという恐怖感を常に抱いていることに問題があるからです。しかし、たいていは自分自身の感情を知ることが出来ず、親密な社交的交際を維持させているようです。彼らが、セラピストや知人らと接するときには、客観的なものの言い方や絶対的言語を使用し、理屈で説明する傾向にあります。彼らの体形には、分裂症のような恐怖心が現れ、完全な肉体化や統合化が見られず、未成熟だと言えます。

図2.スキゾイド型
体は、ばらばらにこわれることの恐怖心に対し団結を続けているように見え、協調性に欠けた動きや、ロボット的動きから明らかに分かります。そして、体はゆがんでおり、様々な体の部分の間で分裂が見られ、接触から避ける心理が伺えます。どちらかというと、体はやせこけて骨が突き出ており、関節は弱く、強度な緊張があります。また、通常筋肉にも緊張が見られ、体に流れるエネルギーも調和が取れていません。特に、後部頭蓋骨近くの首の辺りでエネルギーが妨げられています。
スキゾイド型は、いわゆる“教授タイプ”であり、ぎこちない態度をとり、たいていは身長が高く細身であり(時に、体重の重いケースもある)、特に手首、足首、そしてふくらはぎが弱く細身です。また、どちらか一方の肩の方が他方より大きく、頭でっかちで片方に傾いており、幻想にふけぼんやりとした目をし、手足は硬直しとても冷たく、そして、ずんぐりとした赤子、または霊妙な小妖精のように見える特徴があります。また、通常極度に活動的であり、地に足がついていない様子が伺えます。典型的な職業としては、芸術家、科学研究者、哲学者、千里眼の人、予言者または空想家が上げられます。スキゾイド型の人の症状が極度な状態になると、精神分裂症、自閉的スペクトル、いくつかの分裂症を引き起こします。
接触することが、彼らには侵略的、そして生命の危機として受け止められます。セラピストは、卵殻を支えるように、クライアントを包み込むようなとても優しい方法、かつ、しっかりと支えるようなマッサージをしなくてはなりません。クライアントとの境界線を意識し、決して踏み入るようなことはしてはならないのです。
クライアントに「ここへようこそいらっしゃいました」という歓迎、「貴方の境界に侵入することなく、貴方を理解することが出来ます」、「私と接するのは安全であり、貴方のおっしゃる条件で接することが出来ます」といったようなメッセージを与える必要があります。言い換えると、お互いの信頼関係を築くには、クライアントに安心感を与えること、つまり表皮の軽く、ゆっくりとしたマッサージから始めるか、クライアントの体にまずしばらく手を置き、彼らの呼吸が深くなりリラックスし始めてからマッサージをすると良いのです。最初から強めのマッサージを実施すると、彼らの境界線に侵入してきたという防御体制に入ることは間違いないと思います。
スポック(スター·トレック)、スタン·ローレル、シネッド·オーコンナー、フレッド·アステア、ジョアン·オブ·アーク、ウッデイー·アレン、ジェームス·ディーン、スティーブン·ホーキング等
ー要望の権利(授乳、扶養される権利)の要求
オーラル型の形成は、生後18カ月までの間、要望する権利を否定された場合に起こります。この世は、授乳、言葉をかわすこと、一緒に遊ぶこと、抱擁する等の要望に全く応答せず、冷酷で暗闇であると幼児は思い始めるからです。いわゆる、両親が幼児の要望に対して信頼のおける立場ではなく、十分な応対をしないことに原因があります。例えば、母親が亡くなったり、病気で寝込んだり、うつ病で精神的に不安定であったりという場合は、母親の存在が全く感じられず、幼児の欲望が満たされません。この時期は、授乳に加え、離乳食も始まり、また這い歩きから自立して歩くようになり、話し始めたりといった劇的な環境の変化が見られる頃です。その他、兄弟姉妹が居る場合は、両親の注意を100パーセント引くことが出来なくなります。幼児が標準よりも早く話し始めたり、歩き始めたり、いわゆる他の子よりも早く自立することは、実は精神的損失を償っているのです。這い歩きをせず、突然自立歩きをすることもしばしば見られますが、これもそういった精神的結びつきがあると言えます。このように、幼児は感受性に対して混乱をし、何が本当に必要なのかを要望することに恐怖心を抱き始めます。なぜなら、心の奥底で、誰も要望には答えないであろうという確信があるからなのです。その結果、親にべったりとまとわりついたり、欲が深くなったり、消極的になったりします。また、執念深く、受動的であり、食い意地が張ったりする傾向にもあります。
オーラル型の人は、何が必要であるかを明らかにすること、自分を表現すること、大衆などと接すること、助けを求めること、自分に甘くすることが不可能であり、自分自身の困窮に不満を抱いたりします。基本的に、拒まれ、空虚感があり、不誠実で、責任感のない人柄です。人生の中で何度も失望を感じ、接することの拒絶を味わってきたことで、冷酷な性格となってしまうのです。
オーラル型の体形は、大人の成熟さが全く見られず、長く、細く、弛緩した筋肉をしています。しばしば、背が高く細身、いわゆる細長い体形をしており、胸部は冷たく前かがみで、肩の辺りに緊張感がとても見られ、呼吸が浅く、脚(足)が硬直して弱いのが特徴です。時折、太った体形で、飢えた人もいます。また、エネルギーを吸い込まれてしまいそうな目をしています。彼ら自身のエネルギーはとても低く不十分な状態です。彼らの空虚感、無力感、孤独では居られない心理、また周囲からの温かみや支えを人一倍欲しがる切望さが体形に現れていると言えます。彼らが、周囲と接するときには、間接的に質問をするような言い方をし、他人が母親的存在になる場合がありますが、実際はもう幼児ではなく成人であるため、精神的に満たされることなどないのです。典型的職業としては、看護婦、調理師、演説者、寄付募集員等に見られます。オーラル型の症状が極度な状態になると、抑鬱症、両極性障害となります。

Figure 3. Oral type
オーラル型の人には、滋養を与えること、精神的支えが必要です。セラピーに来たクライアントは、しばしば自分の無精さや疲労を訴えます。セラビストは、クライアントを絶望させることを避け、彼らこ本当に何が必要なのかを気付かせる手助けをしなければなりません。「時々、他人に頼っても構わないのです。貴方のその精神力の強さは賞賛すべきものですが、私たちはみんな助けや愛情を必要としているのです」といったメッセージを与えることが必要です。また、必要なものが見えてきた人には、「不平にも拒絶されてきた貴方にそれを償うことが出来ないのは事実です。しかし、人生は耐えられるものであり、時々周囲が貴方を支えてくれるでしょうし、貴方も自分自身を支えることが出来るのです。上手く切り抜けられるものです」といったメッセージに変わります。マッサージをする場合も、徐々にマスクを取り除くように深いところへともっていくのが良いでしょう。またエネルギーレベルを上げるようなしっかりとしたマッサージ、胸部や脚(足)部にも意識しながら実施すると効果的だと思います。
クリント·イーストウッド、トゥイギー、マーレーン·ディートリヒ、トニー·プレヤ、ジュディ·ガーランド、ビーター·ユースティノフ、白雪姫
