アロマトピア誌78号
ボディサイコセラピーにみる精神面と身体一特質とそのつながり最終回
人格形成論(Character Structure)一後期
井上裕美子

アロマトピア誌78号
人格形成論(Character Structure)一後期
井上裕美子

今回は、後期(最終回)としてファルスのナルシスト型を紹介します。このタイプは、しばしば初期に形成されるスキゾイド型と関わりがあり、スキゾイド型とリジット型の両者が一緒に強く体形に出る傾向が多々あります。
リジット型は、男性と女性によって少々異なり、男性型には、ファルスのナルシスト型と受身な女性型があります。女性型には、ヒステリック型と男性的で攻撃的タイプがあります。ファルスのナルシスト型男性とヒステリック型女性は、過度に自分自身の性を意識し、いわゆるステレオタイプであると言えます。彼らは、両親から肯定的な性の認識を受けます。しかし、しばしば過度な刺激を与えられ、必然的に拒絶されることも考えられます。彼らは、同性の親を同一視することが、この世に生存するには良い方法だと学ぶのです。受身な女性型男性と、男性的で攻撃的タイプの女性にはもっと分裂が見られ、自分自身の性に対して否定的イメージを抱き、別の性の特質が見られることがあります。例えば、男児は、ソフトで温和な性格をしており、女児は、乱暴で頑固な性格となる傾向にあります。最終回は、この4タイプの中で、ファルスのナルシスト型とヒステリック型について触れてみたいと思います。
リジット型の形成は、エディプスコンプレックス期の成長時、3歳から6歳の間に起こります。幼児は自分の性に対する意識が高まります。これまでは、母親が主な世話人でしたが、3歳を過ぎると父親が幼児を社会へと連れ出す重要な存在となります。この時期には、内面的な要求だけでなく、外界に対してもエゴ(自我)が強く確立されます。幼児は、異性の親に拒絶される経験を得、親からの愛情に対して裏切られる思いをします。幼児にとっては、エロティックな快感、性の認識や愛情は全て同じものなのです。幼児は、次第に苦痛、激怒や幸福な感情全てをコントロールし始め、感情を内に秘めるようになります。感情に屈することは、全ての感情を相手に表現することであり、幼児にとってはとても恐ろしいものなのです。その為、幼児は、直接的に本当に自分に必要なものを得ることが出来ず、人を操ることで、要求を満たし始めます。愛情は自尊心と深く関わり合うようになり、性的な愛情の拒絶は、彼らの自尊心を傷つけるものとなります。
リジット型の人は、他人に愚か者だと思われたくないため、感情や行動までも自分の心の内に抑えてしまいます。彼らは、いわゆる世間一般の人(俗人)となる傾向にあり、野心がとても強く、競争心があり、攻撃的です。「私は、優秀であり、たくさんの知識がある」と主張します。しかし、内面的には、裏切りに対する強い恐怖心が備わっていて、どのような状況下でも、傷つきやすい弱い自分というものを避ける傾向にあります。この為、彼らはより一層自尊心というものを形成していくのです。頭を高く掲げ、背を真っ直ぐにする姿勢は、自尊心が高い現われです。彼らの体形は、強いエゴにより、外面的コントロールが多く出ています。人間のもつ恐怖心というものは、彼らのエゴによって認識されることはないのです。
リジット型の人は、愛情や性的感情を他人から要求しますが、実際に相手と関わると、誘惑的に権限を与える立場に変わり、中立の立場に陥ります。これは、競争心を引き起こし、愛情など感じることが出来なくなります。その為、彼らの自尊心が傷つけられ、更に競争心を強く抱くようになります。その結果、彼らが本当に欲しいものを得ることが出来ず、悪循環となります。彼らの性交は、軽蔑を伴うもので、愛情は感じられません。男女関係も余り長続きしないのが特徴です。
「rigidity(リジットな人)」という用語は、一般的に筋肉の硬直を示し、内面的感情を満たす衝撃が抑制され、緊張した状態になることを言います。彼らの身体は、典型的に魅了的であり、精力的で、均整のとれた体形をしています。姿勢は直立で、自信に満ち、自尊心が高く、活気に満ちています。優美な動きをし、多くのエネルギーを抱えているのが、全体的に筋肉が高緊張してピンと張っていることから分かります。特に、胸部の辺りに強い緊張が見られ、骨盤は冷たく、引っ込んだ感が見られ、しばしば腰部を痛めることがあります。
一認識される権利、出世することの要求
ファルスのナルシスト型は、主に男性に見られるタイプで、成功することや自尊心を高めることなら、どのような危険も恐れず、敵を負かせる勢いを持っています。彼らにとって、人生は仕事をすることや戦うことであり、刺激や挑戦を伴うものなのです。常に、ある目標に向かう挑戦が待っていて、リラックスしている暇などありません。そして、努力を積み重ねていくのです。彼らの体形は、直立的で、自己主張が強く見られる身体は、挫折する恐怖心に対して垂直に立っているのが分かります。筋肉は堅く引き締まっており、倒れないように奮闘しているのです。これは、いかなるリラクゼーションをも許しません。しばしば逆三角形型の体形をしており、広い肩をし、幅の狭い腰をしています。典型的職業に、競技者、株式仲買人、陸軍軍人、ギャンブラー等が挙げられます。症状が極度の状態に達すると、加虐性愛(サディズム)や妄想症を引き起こします。

図1.ファルスのナルシスト型
リジット型の人がセラピーに来て最初に訴えることは、彼ら自身に感情というものが全くないということです。彼らは、本当は自分自身の感情というものに触れたいと思いますが、屈服すること、快感を得ること、そして親密に陥ることは全て恥をかかされ、挫折することだと経験して来たのです。単に彼ら自身が傷つけられるだけだという否定的観念により、「私は、感情などに触れることはないでしょう」と断言し、自分をその場から遠ざけてしまうのです。彼らは、愛情よりも性欲が先に立つ傾向にあり、決して彼らの感情が満たされることはなく、「どちらの選択も間違っている」という、二重の拘束状態を引き起こしてしまいます。そして、自尊心が高まり、感情を抑えてしまうのです。感情の抑制など、本当はしてはならないのです。セラピーで、彼らは心(感情)と生殖器とを連結することが、解決へと結びつくのです。
セラピストは、セラピーを始めてすぐに彼らの敵となり、必要に応じて、彼らに負かされる立場に置かれます。その代わりとして、セラビストは、彼らにとって、柔軟ではあるが精神的には強いという模範を示す努力をし、優しさや柔軟さというものは決して欠点ではないことを教える必要があります。そして、彼らが徐々に、心の奥底に潜んでいる、傷つきやすい自分というものに触れることで、楽しみや喜びを味わう機会を与える必要があります。セラビストは、「大きな勢力や能力を持っている人でも泣くことはあります。私は、貴方が自分の感情や柔軟さを見せてくれることを尊敬します。しばしば、誰も優位に立つことはないのです」というメッセージを与えます。セラビストは、決して彼らと競い合う状況に陥ってはなりません。セラビストの方が賢いとか、誰がボスであるなどという態度を取ってはなりません。
セラピーの過程として、マスクのかかったクライアントは、まず「はい、でも…」と躊躇し、その後、劣等の自分、または隠れた自分が意識の中に現われ始めます。そして、「私は、貴方を愛することは決してないでしょう」と言ってきます。ボディワークの結果、クライアントに感情が生まれ始め、高等の自分が問題を解決するようになり、「私は、コミットします。私は、人を愛します」と言えるようになるのです。
アーノルド·シュワルツネッガー、グレース·ジョーンズ、マドンナ、キャプテン·カーク(スター·トレック)、トム·クルーズ等
一選択する、遊ぶ、両義にとれることの要求
ヒステリック型は主に女性に見られるタイプで、全てのことが手に負えないものであると感じてしまいます。彼らにとっては、興奮することや、恐怖心を感じる出来事が常に生じているのです。彼らは、人の注意を引くことを必要としますが、じっと静かにしていることや、実際に人に見られることは耐えることが出来ないのです。そのような状況から逃れるために、どのような状況でも規則を定めようとします。彼らにとって全てのものが、性的なもの、刺激的で危険なものなのです。これは、少なくとも片親が本来持つ自分の性を利用し、幼児を性的な対象においてきたことに関係があります。もう片方の親は、しばしば冷淡でよそよそしく、とても厳しい態度を取り、特に、性や競争心に関心を抱いていることがあります。幼児は、過度に感情反応を示し、露出的で劇的な態度を取るようになります。男女関係においても、異常なほど別の性の人に対し、注意を引きますが、性的な問題が多く見られます。例えば、プリオルガスム症候群、早熟や遅滞な射精や満足感を得ないオルガスム等が挙げられます。
ヒステリック型の体形は、とても魅力的で、成熟していて良い体格をしています。または、優美でしなやかな様相をしていて、これは相手だけでなく自分自身にとっても、当惑させるものかもしれません。その反対に、完全に硬直していてぎこちなく、男女の区別のない体形をしていることもありますが、いずれも、性的にとても魅力があります。典型的職業に、俳優、セックス·ワーカー、パーティー·オルガナイザーやポップ·スター等が挙げられます。症状が極度な状態となると、ヒステリー(病的興奮)、偽性精神分裂病、多様性人格、病的恐怖症、そして心気症を引き起こします。

図2.ヒステリック型
ヒステリック型でスキゾイド型の特徴も伴う人は、交際する欲求と人と接することに対する不安とが入り混じっています。一般的にヒステリック型の人は、アプローチをし続ける傾向にありますが、危機を感じたときには、セラピストと単に居合わせることよりも、自分を守ることであれば何でもしようとします。その為、セラピストは、魅力的で愉快な題材を提供しないように気をつけなくてはなりません。そして、個人的判断を避けるような立場でなくてはなりません。セラピストは、今、クライアントの感情に何が起きているのかを指摘し、自分の恐怖心に直面するように仕向けるのです。但し、温情のある賢明な人間的反応をしなくてはなりません。セラピストからのメッセージとしては、「私は、貴方の要望に応えるためにここに居るのではありません。そして、貴方も私の要望に応えるためにここに居合わせている訳ではありません。貴方はそのようなことをしなくても、私の注意を引くことが出来るのです。この場において、貴方は虐待されることなく自分なりにふるまうことが出来るのです」と伝えることです。
マリリーン·モンロー、ジェームス·ディーン、眠り姫、ミック·ジャガー、デービット·ボーイ、スライ·スタローン、ベティ·デービス、ボーイ·ジョージ等
ヴィルヘルム·ライヒに始まった人格形成論は、多くの後継者に受け継がれ、今日のサイコセラピーに多く取り入られています。結局は、完璧な人間というのはこの世に存在しないのです。多かれ少なかれ、幼児は精神的にショックを得、内に秘められた感情というものが筋肉に蓄積され、体内に流れるエネルギーさえも妨げるようになり、それぞれの体形が出来上がるのです。身体に蓄積された感情は、無意識的なレベルへと陥りますが、セラピーを通して、クライアントの意識的レベルへと持っていくことにより、いかにその状態に直面し、奥底に隠れた彼らの恐怖心を和らげていくかということが重要な鍵であると思います。ボディサイコセラピーに取り入られているマッサージ方法は、ゲルダ·ボイセン(GerdaBoyesen,1980)に紹介されたバイオダイナミック·マッサージ(BiodynamicMassage)です。これは、聴診器(現在は、電子聴診器が多く使用されています)を使い、お腹の蠕動の音に耳を傾け、身体に触れることに対する無意識的な反応を見るのです。セラピストは、クライアントにマッサージをしながら、奥底に隠れた感情を探っていきます。このマッサージについては、またの機会にもっと詳しく説明したいと思います。
最後に、ここに紹介したヴィルヘルム·ライヒの人格形成論が、ボディーワークを伴うセラピストにとって、知識の一環としてお役に立てたらと思います。クライアントだけでなく、セラピスト自身がどのタイプであるのかと知るのも興味のあることかもしれません。どのタイプのクライアントに対しても、セラピストの温和で誠実な精神的サポートはとても重要なことであり、お互いの境界を保ちながらセラピーを行うことで、信頼関係を築いていきたいものです。
