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アロマトピア誌157号

アロマ業界、過去から未来へ

Complementary medicine in the UK

アロマセラピスト

木島陽子

Aromatopia 157 cover image

英国では、アロマテラピーをはじめとした補完医療の歴史·伝統が根づいており、身近な存在として現在も多くの人々に取り入れられている。本稿では、ロイヤルフリーホスピタルのボランティアセラピストとして働いた経験を軸に、英国での看護·介護におけるアロマテラピーの歴史を探りながら、日本のアロマテラピー分野の未来の可能性を模索する。

Image of essential oils

はじめに

2012年、ガブリエル·モージェイ氏が校長を務めるITHMA(TheInstituteofTraditionalHerbaMedicineandAromatherapy)でIFPAアロマセラヒストの資格を取得後、家族が病気になり介護が必要な生活になりました。このことをきっかけに、補完医療が進んでいる英国の現場を体験して、身内のケアに役立てたいと決意し、2018年に再び渡英しました。そこでキース·ハント氏が補完療法チームリーダーとして働くロイヤルフリーホスピタルを訪れ、幸運にもボランティアセラピストとして活動できるチャンスを頂きました。現在、彼に師事する元オブザーバーとして所属し、先輩セラピストとともに各病棟を回っています。

本稿ではキース氏にインタビューをしたこと、臨床アロマセラピストのリアノン·ルイス氏の講座に参加して得たもの、また、英国のホスピスの補完医療の現場で働く人々の対話で得た情報から、アロマテラピーの発展を模索し、私の考察を述べたいと思います。

英国の看護·介護におけるアロマテラピーの歴史

私の師匠の一人であるキース氏は、「クレア·マクスウェル=ハドソンは、看護·介護アロマテラピーの歴史の黎明期におけるパイオニアの一人と言っていいだろう」とおっしゃいます。クレア氏の著書『アロマテラピーマッサージ·ブック』(日本語版:河出書房新社、2003)は、当時のベストセラーです。クレア氏は、この本についてテレビのインタビューの際に、「第一次世界大戦のときは、病院でクリニカルマッサージが行われていた。このマッサージを、既存の病院に復活させるべきだ」と主張していたそうです。この発言を受けて、チャリングクロスホスピタルが最初にクレア氏に協力を申し出ました。

彼女の学校の看護アロマテラピーコースを受講した学生たちは、卒業に当たり、実際の病院内での事例研究が必須でした。卒業したセラピストたちは即戦力となり、今でも病院やホスピスで活動しています。この中にキース氏がいたのです。

クレア氏と直接親交のあるキース氏によれば、クレア氏は医療従事者ではありませんが、彼女のタッチングケアは本当に素晴らしかったと話しています。クレア氏の学校を卒業した生徒で、英国在住の井上裕美子さんは、セラピスト歴20年以上のキャリアがあり、ロイヤルトリニティホスピスの補完医療のセラピストとしても活躍されていました。現在も3つのサロンを掛け持ちし、りンパドレナージュとリフレクソロジーに特化した施術を行っています。

また、看護·介護に特化した『プロフェッショナルのためのアロマテラピー』(日本語版:フレグランスジャーナル社、2009)の著者であるシャーリー·プライス氏とレン·プライス氏をはじめ、数人の熱心なセラピストたちによる草の根の運動がこの業界を盛り上げて、さらにオピニオンリーダーとしても重要な活躍をしてきました。

クレア氏に続くセラピスト

このクレア氏に感化され、看護·介護アロマテラピー黎明期にロイヤルフリーホスピタルで補完医療チームを立ち上げたのが、キース氏です。最初に立ち上げたときは大変な苦労をされましたが、長年にわたる地道な活動や実績を重ねて、病院の医師からも信頼の厚いクリニカルアロマセラビストとなりました。

家族思いで知られるキース氏ですが、2019年3月の現役引退スピーチの中で「僕の妻は、(キース氏のことを)ロイヤルフリーホスビタルと結婚していたと思っていたかもしれない」とおっしゃいました。このキース氏の補完医療への取り組みの情熱と向上心は、2013年に大英勲章の授与をもたらします。

キース氏を大英勲章に推薦したのは、ロイヤルフリー病院で働く医師たちでした。キース氏はクレア氏の学校を卒業後も、彼女の学校の教師や後援者として働いていました。その教え子たちが、現在のロイヤルフリーホスピタル補完医療チームの重鎮セラピストとして活躍しています。

現在は、どこの病棟でも補完医療であるアロマテラビーマッサージが行われています。セラピストは、「ホスビタルプレンド」というオーガニックオイル使って、医師、看護師の指示の下、施術を行っています。

リアノン·ルイス氏は、看護·介護アロマテラピーの分野において、エビデンスに基づいたアロマテラピーの実践者であり、エッセンシャルオイルの化学的リサーチにも尽力を注いでいる研究者の一人です。リアノン氏は、英国の病院のICUの看護師として働いていた際に、自分の看護師としての地位が上がっていくたびに、患者との距離が開いていくことに疑問を抱き、もっと患者中心のケアができないかと模索したとき、ホリスティックアロマテラピーに出会いました。

勉強を続けていくうち、クレア氏から『アロマテラピーマッサージ·プック』を出版するので、エッセンシャルオイルの分析ページの制作を手伝ってくれないかとオファーがあったそうです。この本の執筆がクレア氏との親交を深め、リアノン氏もクレア氏の学校で教えるようになりました。リアノン氏は、シャーリー·プライス氏とも親密に交流していました。

特筆したいのは、リアノン氏がロイヤルマースデンホスピタルのがん病棟で、アロマスティックの導入を提案したことです。アロマスティックには中央に小さな穴があり、そこから香りが立ち上がります。患者には、香りを自分で選択することができるという楽しみもあります。また、持ち運びが可能で、いつでも好きな香りと共に入院生活を過ごせるという利点があります。このスティックをきっかけに、病棟の患者の生活の質が大幅に向上したそうです。このアロマスティックを思いついたきっかけを伺ったところ、「アロマセラビストが患者のところに毎日マッサージに行けないこともあるが、アロマスティックがあれば、ポケットに入れ持ち運ぶことができるし、マッサージのときに感じた心地良い香りを思い出し、いつでもリラックスできるから」と話してくれました。

日本の看護·介護における現状

日本の現状について言えば、ケアマネジャーをしている友人にアロマテラピーをはじめとした補完医療の導入を勧めたとき、現場の大変さも分からない部外者であるセラピストが、高齢者施設に踏み込んできてボランテイア活動をすることは不愉快である、と怒られました。父が入所している施設でも似たような対応でした。現場で働く人は余裕がないのだと思います。このような現状から、「セラピー」という言葉を用いない方が良いのではと思うこともありますが、こういった現場こそアロマテラピーが一番必要なのです。

Image with Simon Roby

セントジョセフホスピスの補完医療セラピストのリーダー、サイモン·ロビー氏と

日本の看護·介護のアロマテラピーの未来

私は現在、『クリニカル·アロマテラピー』(フレグランスジャーナル社、2015)を、アロマセラビストで薬剤師の久保田泉先生、クラスメートと共に読み合っています。久保田先生は、マイナス要素が限りなく少ないアロマテラピーを提案されています。さらに、安全性を重視し、ホリスティックな観点からのアロマテラピーの実践も勧めています。特に看護·介護における英国の現場では、このホリスティックアロマセラピーが、患者を病人ではなく、一人の人間として見ることで、患者の人生の旅路を支えています。

ロンドンの中心にあるセントジョセフホスピスでも、アロマテラビーをはじめ、さまざまな補完医療を、外来患者や入所者に無料で利用できる場所を提供しています。このホスビスでは、看護師も非常時に備えて、補完医療のセラビストの活動をサポートしています。補完医療セラビストのリーダーであるサイモン·ロビー氏は、「補完医療は、生活の質を向上させるだけでなく、個々の幸福度にも貢献している」と述べていました。こういった英国の実績や功績に影響を受けてか、日本の施設にも少しずつアロマテラビーを導入する施設が増えてきました。しかしながら日本では、アロマテラピーはまだ蚊帳の外にいる感じです。

私は、アロマセラピストの職業的地位を、国レベルで確立していくことが今後一番必要だと考えています。また、アロマセラビストが活躍できる場所を、個人の病院や民間の施設だけでなく、自治体が運営する施設にも働きかけるべきだと思っています。そのためには看護·介護の現場で働く労働力の確保を、国が支援できるシステムが急務だと思われます。日本は超高齢社会を迎え、若い人が少なくなります。優秀な外国人看護師などを介護の現場で活用すれば人材不足が解消され、働く人同士にも余裕が出て、補完医療であるアロマテラピーを取り入れようという機運が高まるかもしれません。

英国の状況を鑑みるに、日本でも介護や医療費が課題となる2025年問題、超高齢社会に対処するに当たり、自然治癒力を高められるアロマテラピー導入の見直しが、さらに検討されるようになると思います。

おわりに

アロマテラピーはQOL(生活の質)を高めるだけでなく、QOD(死の質)を高める助けになると思います。QODとは幸福死に欠かせない要素です。どんな人にも死は訪れます。だからこそ、私は死を迎えるに当たって、楽しかった記憶を思い出す香りに包まれて、この世を去っていきたいと願っています。死の間際に当たって、幸福感を高めてくれるのがアロマテラピーであると思います。こういった最期を迎えたい人が増えていき、近未来にアロマテラピーが身近な存在になれれば、未来はもっと明るいものになると私は考えます。

木島陽子 Yoko Kijima